『読むクリニック』   胆江日々新聞連載

妊産婦の歯科治療について

今回は、妊産婦が歯科治療を受ける上での疑問についてお答えしたいと思います。

.妊婦は歯科治療を受けられますか?
   妊娠初期(1〜4ヶ月)と妊娠後期(9〜10ヶ月)は胎児の薬剤に対する危険性が高く、
  また、つわりや腹部膨隆などの問題があるため治療には適さず、必要な場合は応急処置のみ
  おこないます。痛みがあったり、近いうちに痛みが出ることが予想される歯や、すでに炎症
  を繰り返している歯は、妊娠中期(おおむね5〜8ヶ月)で胎児・母体共に状態が安定して
  いれば治療をおこないます。胎児・母体の状態が不安定な場合は、産婦人科医との連携が必
  要です。

2.レントゲン写真撮影は胎児に影響はないのですか?
   歯科では腹部にX線を直接照射することはありませんし、防護エプロンを着用して撮影すれ
  ば、X線の胎児への影響はほとんどゼロです。したがって、診療上必要なレントゲン写真撮
  影について、必要以上の心配は要りません。


3. 治療に使う局所麻酔は安全ですか?
   抜歯や虫歯の治療のための通常量の局所麻酔薬の使用では、母体胎児共に影響ありません。
  強い痛みを我慢するストレスの方が悪影響を及ぼすと考えられます。

4. 痛み止めや化膿止め等の薬は安全でしょうか?
   鎮痛剤、抗炎症薬で胎児に安全だといえる薬はありませんので、できれば使いたくないので
  すが、激しい痛みや炎症を伴う場合は薬を服用せず我慢することにより、かえって胎児に悪
  影響を及ぼすことがあります。したがって治療上の有益性が危険性を上回ると判断した場合
  にのみ比較的安全な薬を服用してもらいます。

5.妊婦は歯肉炎になりやすいのですか?
   妊婦によくみられる口腔疾患として妊娠性歯肉炎があります。原因は女性ホルモンの影響に
  よる歯肉毛細血管の増殖とともにプラーク(歯垢)中の細菌による刺激と考えられています。
  妊娠中はつわり、身重のためブラッシングが不十分になりがちでさらに歯肉出血を伴いやす
  いことも歯ブラシの使用を避けさせるので歯肉炎を増悪させる悪循環になります。ていねい
  なブラッシング、歯肉マッサージを心がけ、症状の重いときはかかりつけの歯科医院を受診
  してください。


まとめ
  前述のとおり、妊産婦の場合、応急処置のみで十分な治療を受けられない場合もあります。
  また最近の研究では母親が歯周病に罹患していると、早産や低体重児出産の確率が健常者の
  7倍になると言う報告もあります。出産後の子供の虫歯になりやすさは、主に母親の口腔内
  の虫歯菌の量で決まるとも言われています。
   これらのことから最も重要なことは、ふだんからきちんと歯科治療を受け日々のブラッシン
  グ等の手入れをおこたらず、口腔内の健康を維持しておくことです。

(第11回掲載分)

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8020(ハチマル・ニイマル)運動−

今回は日本歯科医師会と厚生労働省が推進している、8020運動についてお話します。

「8020とは何」
 8020運動は通常の食生活を送るために、自分の歯が20本以上保たれていれば、ほとん
 どの食品を咀嚼(物を噛む)するのに、特に支障がないという調査結果をもとに、平均寿命
 である80歳で20本の歯を保つことを歯科保健の目標として、平成元年に生まれました。
 8020運動は、ある年齢で歯が何本あればよいという目標値を示したものではなく、生涯
 を通して自分の歯で食べる楽しみを味わうことを目標にした運動であります。

「8020の現状は」
 8020運動がスタートした平成元年は80歳の一人平均現在歯数は、4本(8004)で
 した。平成
11年には8本(8008)と11年間でわずか4本しか増えませんでした。8020
 運動は程遠い目標のようにみえましたが、歯が20本以上ある人の割合の推移(8020割合)
 をみてみますと、平成
5年は80歳では国民の8,9%でしたが、平成11年では17%と大幅に増え
 てきています。
 現在の歯科治療は歯を抜かないという考えが浸透しており、また早期治療の結果、歯のダメー
 ジが減少してきてます。その結果将来8020(ハチマル・ニイマル)は現実のものになるで
 しょう。


「イー歯トーブ 8020 おじいちゃん おばあちゃん コンクール」
 80歳で20本の歯を保つ8020運動を中心とした歯科保健の普及啓発を推進することを
 目的に、平成3年から岩手県と岩手県歯科医師会の主催でスタートしました。今年で12回
 目を迎ましたが、毎年応募者が増え、昨年は岩手県内各地から
400名を超えました。胆江地区
 からは、男性13名、女性
21名の方が表彰を受けました。最高年齢は95歳でした。皆に共通
 して言えることは日常生活においても、自立的で行動的で健康であると言えます。歯の喪失は
 咀嚼(物を噛む)力の低下をきたし、食生活や健康の障害を生じます。30歳台ですべての歯
 を喪失する人がある一方で、80歳以上で多くの歯を有する人があるように、歯は加齢に伴っ
 て必然的に喪失するものではないのです。
 歯の喪失はおもに、むし歯と歯周病(歯槽膿漏)によってもたらされます。これらの病気とと
 もに不衛生な口腔内の状態が続くことにより発生する生活習慣病の一つと言えます。
 コンクールの申し込みは岩手県内に住み、80歳以上で20本以上の歯が有り、十分機能して
 いる健康な人で、最寄の歯科医院へ申し込みます。今年も実施中ですので、対象者はぜひ申し
 込んでみて下さい。(9月30日まで 無料)

 世界一の長寿国となった日本ですが、歯に関してはまだまだのようです。一生自分の歯で物を
 噛めるようにしたいものです。そのためには日頃からお口の健康に注意して、定期的な専門医
 (歯科医)による検診が必要と思います。

(第12回掲載分)

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根面ウ蝕について

あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、読んで字のごとく歯の根がむし歯になることを言います。通常、歯の根の部分は骨や歯ぐきの中に埋まっており、むし歯になることはありません。しかし、何らかの理由により歯の根が露出してしまい、その部分がむし歯になることがあります。これが根面ウ蝕です。根面ウ蝕は特に高齢者の方に多く、歯の周りにぐるりと帯状に見られることもあり、治療が非常に困難です。又、ウ蝕が歯ぐきに隠れて見つけにくかったり、進行しても痛みを訴えないことも多く、気づかないうちに歯が根本から突然折れてしまう事もあります。ウ蝕のある場所が歯を支える根ということもあり、場合によっては抜かざるを得ないことも少なくありません。

@根面ウ蝕の原因

他のむし歯と同様に歯の汚れが大きな原因ですが、その前になぜ歯の根が露出してしまうのかが、大きな問題となります。歯の根が露出する原因としては、

1、生理的な歯ぐきの退縮―― 加齢により、生理的に歯ぐきが根の方向に下がること

2、歯周病による歯ぐきの退縮―― 歯周病で歯ぐきが同様に下がること

3,その他―― 歯ブラシの誤った使い方、かみ合わせの強い歯、等

などが考えられています。こうして根が露出してしまった所に

1,根まで歯ブラシが届かなくなり清掃がうまくできない

2,加齢によって唾液の量が少なくなり口の中が乾燥し自浄作用が弱くなる

3,入れ歯を入れていて口の中が不潔になりやすい

などの要因が加わって根面ウ蝕を作ってしまいます。

A根面ウ蝕の治療法

基本的には他のむし歯と同様の処置になるのですが、大きさや深さによってはとても難しく、又予後も悪くなりがちなので、歯冠部が十分残っていても抜かなければならなくなることさえあります。もし痛みなどの症状がなければ削ったり抜いたりせずに、ウ蝕の進行を抑える処置をして定期的にケアをするという方法がとられることもあります。

B根面ウ蝕の予防

むし歯の原因の多くは歯の汚れです。正しい歯磨きを身につけることがとても大切になります。しかしながら、加齢による口の中の変化は止めることが出来ませんし、根面ウ蝕のリスクも加齢とともに高くなってきます。初期であれば比較的簡単な治療で済み、原因を特定し適切な予防法を見つけることも可能です。痛みなどがなくても定期的に歯科医院に足を運び、お口の中をチェックしてもらうのが一番です。

(第13回掲載分)

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歯周病(その1)

歯周病とは、歯肉や歯を支えている骨(歯槽骨)などの,歯の周囲の組織に起こる病気の総称です。歯肉に炎症が起きた状態を「歯肉炎」,炎症が原因となり歯槽骨など歯を支えている組織全体まで崩れてしまう病気を「歯周炎」といいます。  

歯周病の進行

年をとるにつれて、自前の歯はどんどん少なくなり40歳以上で歯を失う人の過半数が、「歯周炎」が原因といわれています。虫歯は歯の表面に歯垢が付着することにより発症しますが、歯周病は歯垢が歯と歯肉の境目につくことにより発症します。歯と歯肉の境目についた歯垢をほうっておくと、次のような段階的な症状を伴いながら、歯周病が進行していきます。

@歯肉炎の発症 歯肉が炎症を起こし、赤く腫れる「歯肉炎」が起こります。歯垢が細菌の塊であることは前にのべましたが、この細菌の出す毒素が、歯肉を刺激し炎症を起こすのです。

A歯肉の出血 歯肉の炎症が進行すると、歯を磨いたときなどの、ちょっとした刺激によって、歯肉から血がでるようになります。この段階では、徹底して歯垢を取り除けば、まだ元の健康な状態に戻すことは可能です。

B歯周ポケットができる さらに進行すると、細菌の出す毒素によって、歯と歯肉の境目が少しずつ壊されてしまい「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができます。

C歯肉の化膿 歯周ポケットには、歯ブラシの毛先がとどきにくいために、いっそう歯垢や歯石がたまってしまいます。この頃になると、歯肉は化膿し膿が出るようになります。この状態を「歯槽膿漏」といいます。

D歯が抜ける 歯周ポケットがまださほど深くない時は、適切な治療を受ければ治癒します。しかし気づかずにほうっておくと歯を支えている骨(歯槽骨)がだんだん溶けてしまい、歯がグラグラしてきます。そして最終的には歯が抜けてしまうのです。

歯周病の進行は一般には非常にゆっくりとしており、歯肉炎があってから最終段階に到達するには数年から数十年かかります。子供の頃にかかった歯肉炎が数十年かけて悪化し30〜40歳になって歯が抜け始めることもあります。

こういったことを防ぐためにも若いうちからのきちんとしたブラッシングで、歯と歯肉の境目をよくみがいておくことが必要なのです。

 

歯周病の原因

歯周病を引き起こす直接の因子は細菌性因子ですが、その他にも体質因子、環境因子がかかわってきます。

      細菌性因子 口腔内には300〜400種類の細菌が生息しており、そのうち歯周病原細菌として7種類前後が着目されています。これらの細菌は歯周局所にへばりつき、運動性のあるものは局所に浸入し、食菌、殺菌能を持つ白血球に負けないで生き残るものもあれば、歯周組織のコラーゲンを溶解させる酵素(コラゲナ-ゼ)を出し歯槽骨を直接溶かしていき、また免疫抑制因子(生体の異物を非自己とみなし排除する働きを抑制するもの)を持つもの、さらには細菌が血液成分を栄養として増殖する過程で硫化物、インドール、アンモニアなどの有害物質を出すものもあります。さらにこの有害物質が他の細菌の増殖をもたらすという悪循環が引き起こされます。歯周病原細菌となるものは健康な口の中にもわずかですが常在しています。しかし歯垢が取り除かれないで磨き残しの状態が長期間存続すると,歯肉周囲の環境がかわりこれらの細菌がどんどん増えていくのです。一方生体のこれらの細菌に対し抵抗する過程が炎症として表れる訳ですが、その結果白血球が集まりリソソームという酵素が放出され歯周組織を破壊していくのです。

      体質因子 それぞれの人が細菌の感染に対しどの程度の抵抗力があるか、また遺伝的に歯周病になりやすい遺伝子をもっているかなどがかかわってきます。

      環境因子 生活習慣が上げられ、喫煙、過度のストレス、不規則な生活、食生活が指摘されており、歯周病の進行に大きな影響を与えています。

 

口の中の状態は、人間の抵抗力と細菌のバランスの上になりたっています。そのため体調を崩して体の抵抗力が低下すると、細菌の繁殖力が増します。かぜなどで熱がでたときには、歯が浮いた感じがすることがありますが、実はこれも、体の状態が歯に影響を及ぼしたものなのです。またストレスがたまると、口の中の自浄作用(唾液や舌、頬などの接触により歯から歯垢が自然に取り除かれていくこと)が鈍るといわれております。歯周病を予防するためには、正しいブラッシングを欠かさないとともに、精神および体全体の健康にも気をつけることが大切といえるでしょう。

(第14回掲載分)

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歯周病(その2)−

前回、歯周病の進行と原因についてお話しました。今回は診査,治療についてお話します。

            歯周病の診査

歯周病かどうかを自分でチェックするには,以下の項目を調べてみましょう。

A 歯肉がむずむずする。    B 朝目がさめると,口がねばつく。

C 口がくさい。        D 歯磨きで出血する。 

E 食べ物がはさまる。     F 固いものがかめない。

G 歯肉の色が赤や紫      H 冷たいもの熱いものがしみる

I 歯肉がぶよぶよ血や膿がでる  J 歯がぐらついている。

これらはいずれも歯周病の自覚症状です。とくにC以下の項目が当てはまる場合は注意が必要となります。早めに歯科を受診して下さい。

歯肉炎は歯肉に限局した炎症であるのに対し、歯周炎は歯の周りの骨が破壊されていくので外からは見えず、検査をしなければどこがどの程度悪くなっているかわかりません。そこで歯の周りの状態を知るために歯科では様々な検査が必要となってきます。

@ レントゲン診査  顎全体を一回で断層撮影するパノラマ写真や少なくとも10枚の小さなフィルムを口の中に入れ口全体のエックス線写真をとります。自覚症状のないところで歯周炎が進行している部位が確認できます。

A 歯周ポケットの測定 初診時や,術後の経過の判定の際に、歯と歯肉の間に目盛りのついたプローベよばれる針をさしこみ歯周ポケットの深さや出血の有無を調べます。また歯肉の下に隠れている歯石の確認が出来ます。

B 模型の印象 歯周病の進行を速める因子に、咬み合わせの状態、歯の形態、歯肉の形態、歯列などが関連し、上下の歯の型をとり模型を作り診断に役立てます。

C      口腔清掃状態 口の中を歯垢染色剤で染め出して,汚れの程度を調べます。染め出された部位は全て細菌のかたまりです。

D    全身状態 歯周病を進行させる因子として特に喫煙や糖尿病が重大な危険因子となります。ヘビースモーカーは歯周炎になる確率が喫煙しない人と比べ5〜7倍高いといわれ、歯周炎の進行が平均して20年早いと言われています。糖尿病の合併症として高血圧や動脈硬化などがありますが,歯周病も重大な合併症の一つです。その他、歯周病には妊娠,薬の副作用で歯肉が腫れてくる場合もあり,問診でチェックしていきます。

E 口腔内カラー写真撮影 口腔内の治療前後の写真をとることにより文字や数値で表せない歯肉の形や色の変化を記録していきます。

歯周病の治療

歯周病治療の原則は,病原性のある歯垢を除去し,口の中の歯垢を正常レベルに維持することです。健康な口の中にも細菌は存在しており,細菌同士が共存しながら住みついています。とこらが、何らかの原因でバランスが崩れると口の中の環境が変化し体に害を及ぼす細菌が増えてきます。口の中の環境を整えるのになされる対策として一番大切なことはプラークコントロール、すなわちいかにして歯垢を取り除くかということです。プラークコントロールは患者さんが家庭で行うものと,歯科医院で行うものと2通りがあり、どちらが欠けてもうまくいきません。

歯肉の上のプラークコントロール

@       患者さん自身が行うもので歯ブラシ,デンタルフロス、歯間ブラシ、洗口剤

薬用歯磨き剤などを使用し日常的に行います。

A       歯科医院で行うプラークコントロールには、歯石除去(スケーリング)とPMTCといって特殊な器具と薬剤を使用し、歯の表面をツルツルにする方法があります。歯石の除去には主に超音波スケーラーといって超音波振動を利用した機械を使用します。

歯肉の下のプラークコントロール

@   歯肉の下の汚れは自分では取りきれません。歯科医院で行われ、前述の超音波スケーラーやキュレットという器具を用い歯肉の下の歯石や歯垢を取り除き、また細菌が浸入している汚れた歯根の表面を滑らかにします(ルートプレーニング)。  

A   薬剤による洗浄 薬剤を満たした細い注射器で歯周ポケット内を洗い流し、ときには抗生剤入りの軟膏を注入します。 

これらの処置によって、歯肉は引き締まり、歯周ポケットは浅くなります。歯周病原菌は空気の少ない深いポケット内で増殖していきますが、ポケットが浅くなることにより歯周病原菌の生息しにくい環境となっていくのです。

 しかしながら、深い歯周ポケットを伴う重度の歯周炎では、手探りでの歯肉の下のプラークコントロールにも限界があり、手術によって歯肉を開き、直接目で確かめながら歯根についた歯石などの沈着物を取り除き、歯周炎によって破壊された骨や歯肉の形態を改善する場合があります。

 歯周病は細菌が原因で起きる炎症であり、その炎症の結果様々な因子がいっしょになって組織破壊が起こる病気です。たとえ手術をしても原因因子が取り除かれなければ再発します。プラークコントロールは患者さん自身と歯科医院のスタッフが協力して初めて達成できるものです。今症状のない人も定期的な歯科検診で歯周病の早期発見、早期治療を習慣にしたいものです。

(第15回掲載分)

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欠損補綴のお手入れ

 欠損補綴(けっそんほてつ)とは、何らかの理由により歯を失った場合それを補う物を言います。その最も知られているのが入れ歯(義歯)です。他には失った歯の両隣の歯に橋渡しした冠を装着するブリッジ(橋義歯)などがあります。今回は、手入れの仕方についてお話しします。手入れの仕方しだいでお口のも清潔に、入れ歯もきれいに使うことができます。

1、入れ歯の種類

 入れ歯には、歯が全く無い場合に入れる総入れ歯(総義歯)と、歯が多少でも残っている場合に入れる部分入れ歯(局部床義 歯)に大きく分けることが出来ます。どちらも自分で装着したり、外したりしなければなりません。

2、入れ歯の手入れの仕方

 ◆入れ歯は失った自分の歯を補うものとして装着しますが、だからといって自分の歯のように何でも食べられるようになるとは限りません。硬い物や粘着性のあるものは食べずらくなりますのであまり硬いものは避けたり、食べ物を小さくして食べなければなりません。◆食後は入れ歯のバネや入れ歯の内側に食べたものが入りやすいので、取り外して水洗いして下さい。また、歯を磨く時も同様に入れ歯を外してから歯を磨き、入れ歯は流水で大きな汚れを落としてから入れ歯専用のブラシ(普通の歯ブラシよりも大きくて毛が長いので汚れを落とすのに効果的)で細かな汚れを落としてください。さらに入れ歯洗浄剤に浸しておけば殺菌消臭効果もあり、入れ歯を常に清潔に保てます。◆部分入れ歯は、普通入れ歯をおさえるのにバネが付いています。バネがかかる歯はかなり力が加わるので弱ることが多いです。歯の調子が悪くなったら早めに診てもらったほうがよいでしょう。バネの部分を入れ歯がゆるくなって自分で曲げ治す方がいますが合わなくなる原因になりますから面倒でも歯科医院で治してください。◆総入れ歯を入れてる方で自分の歯がないからとよく洗わない方が見受けられます。総入れ歯の方は、歯がないので入れ歯の全面が粘膜にあたりますので赤くただれてひどい時には潰瘍を作ったりします。また、ただれているために食べ物の味が変わったりしておいしく食べれません。入れ歯をきれいに洗って使うようにしましょう。

3、入れ歯の保管の仕方

 入れ歯を24時間装着したままの方がおられますが、歯茎や歯を休ませる意味

でも寝る時は外しておくのが良いでしょう。入れ歯を使用しないで外しておく場合は、前記のようによく洗った後によく磨いて入れ歯専用の容器またはタッパーなどに水を少し入れ、乾燥させないように保管してください。入れ歯を長い間乾燥させると変形やひび割れの原因になりますし、何よりも容器等に入れておけば間違えて踏んでしまったり、ズボンのポケットに入れたまま座って壊したり、ティッシュにくるんだ入れ歯を捨てられたりなど破損、紛失のトラブル防止にもなります。

○ブリッジ(橋義歯)の手入れの仕方

 橋渡しした歯の無い部分の下部に食べ物がよく挟まってしまいます。しかし入れ歯と違ってブリッジは外したり出来ませんのでこのような場合ブラッシングのときにお話してきた歯間ブラシを隙間の大きさに合わせて使用するといいでしょう。

 入れ歯やブリッジをより長く快適に使用するためには、定期的な歯科検診をお勧めします。合わなくなった入れ歯やブリッジを長期使用すると、あごの骨が急激にやせたり、歯周病になって歯を抜かなければならなくなったりしますので調子が悪くなくても年1回の定期検診が重要です。 

(第16回掲載分)

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『顎関節症』について

◆顎関節症はどんな病気

顎関節症(がくかんせつしょう)は「顎(あご)の関節や周囲の筋肉が痛い」、「顎の関節でカクカク、ミシミシ音がする」、「口を大きく開けにくい」などの症状が一つ以上出現している状態です。
 顎関節症患者の約7割を占める関節円板(かんせつえんばん)障害の病態を例にします。顎の関節は、口を開けるときに回転しながら前方にスライドしますこのため、関節のクッションの割をする関節円板がずれてしまうことがしばしばあります。こうなると顎の関節の動きに支障をきたすこととなり、その結果、痛みや口が開けられないという症状を引き起こします。

◆顎関節症の原因と診断

 顎関節症の原因は長い間かみ合わせの異常によるものと考えられてきましたが、現在は単一の因子でなく、複数の因子が重なり生理的適応範囲を超えたときに発症すると考えられています。また、顎関節症は先の関節円板障害を含む5つの病態に分類されています。しかし、確定診断とその詳しい病態や予後についてはMRI等の検査機器を備える大学病院の専門科に委ねることが必要です。

◆顎関節症の治療法は

顎関節症に対する治療法としては、スプリント療法薬物療法重症の場合の外科療法等が挙げられます。スプリントとは上下いずれかの歯型に装着するマウスピースのことで、治療の第一選択として最も広く用いられてきました。しかし、治療を行わなくても長期的には症状が改善されるという調査報告もありなるべく元に戻れる治療法を選択することが推奨されています。

◆もし、顎関節症と思ったなら

顎関節症は増加傾向を示し、むし歯、歯周病に次ぐ第3の歯科疾患に位置づけられています。従って、まずかかりつけ歯科医を受診し、カウンセリングを受けることをおすすめします。比較的軽度の場合には、顎の安静に努め、生活リズム、食習慣、姿勢の改善を図るなど家庭でのセルフケアが有効となる場合があります。場合によっては薬物療法や前述のスプリント療法を併用することもあります。しかし、それでも症状に変化が無く、的確な診断も困難な場合は専門の施設へ紹介していただくこととなります。先に述べたように顎関節症を発症させる原因が一つであることは希で、多くの場合いくつかの寄与因子が複雑に絡み合って症状が発現し、持続することが少なくありません。従って顎関節症だけに限りませんが、治療効果をあげるためには個々の患者さんが持っている生活状況や精神状態をも考慮した治療が必要となってきます。顎関節症は生活習慣病としての側面が大きく、治療の際には患者さんが積極的に参加してセルフケアを行うことが重要です。とにかく、自己診断せず歯科を受診して適切な治療と指導を受けるべきです。

寄与因子:かみ合わせの異常、日中あるいは夜間のかみしめ、頬杖、人間関係などのストレス、外傷、不良姿勢など

(第17回掲載分)

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口臭について

最近、自分の口臭が気になるという人が増えています。その口臭には必ず原因があり、それを解決することで解消できます。胃潰瘍や肺の病気などの全身疾患も原因となりますが、口臭発生の約9割は、口の中に原因があることが判っています。口の中には数百億もの細菌が存在し、それらの細菌が食べかす等を分解する際に口臭の元を作り出します。その主成分は、難しい言葉ですが「揮発性硫化物」というもので、卵の黄身の腐敗臭、野菜の腐敗臭の複合臭と言われています。口の中に原因があると言われている口臭の種類と解決法について考えてみましょう。                             

1. 生理的口臭
  起床時や空腹・疲労時、緊張したときに発生します。これは唾液の減少により、細菌が増殖し口の中が汚れるのが原因です。このような一般的な口臭は、歯磨きやうがいなど口の中を清潔にすれば解消出来ます。

2.病的口臭
  治療の必要がある疾患や改善すべき原因があるものを言います。

 (1)歯周病とむし歯
 口の中の清掃が不十分だと歯垢がたまり、細菌が増殖し歯周病を進行させ、破壊された組織や血球成分などのタンパク成分を分解し悪臭を作り出します。むし歯の場合、深い大きなむし歯や多数のむし歯があると、たまった食べかすが細菌により分解され腐敗したり、歯根の膿からいやな臭いが発生します。歯周病、むし歯が原因の場合、歯科医院での治療と毎日のケアーをしっかり行うことが大切です             

 (2)舌苔
 最近、注目されているのが「舌苔」と言われる舌の汚れです。「ぜったい」と読みますが、細菌やタンパク質、食べかすなどが結合して舌についたもので細菌によって分解されると悪臭を発生します。残念ながら、舌苔は水ですすいでも落ちません。舌苔がつきやすいのは舌の奥の部分です。この部位を歯ブラシや舌ブラシでそっと磨きましょう。

 (3)唾液の減少
 唾液は、口の中を洗浄・殺菌する働きがあります。その為、唾液が減少すると当然口の中が汚れ口臭が強くなります。年齢と共に口臭が強くなるのは唾液量が少なくなるからです。唾液の量を多くする為には、舌や口を意識的に動かすと良いでしょう。又、口が渇いていると感じたなら、うがいをしたりお茶を飲むことも良いでしょう。

3.心因的口臭
 
 生理的な口臭以外認められないのに、口臭があると悩んでいる人に見られます。解決法は何よりも気にしないことです。気になる人は歯科医院で相談しましょう。
 殆どの場合、毎食後歯磨きを行い、口の中を清潔に保つことが大切なようです。
 いずれにしても、歯と口の健康を守るには、セルフケアだけでなく定期的な歯科医院での検診を受ける心がけが必要です。

(第18回掲載分)

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外傷について

 歯科で扱う外傷としては、大きく軟組織(歯肉、舌、口唇など)の外傷と、硬組織(歯、骨)の外傷の2つに分けられます。

 軟組織の場合、出血している時はまず止血を試みて下さい。ティッシュペーパーや綿は傷にくっつきやすいので、できればガーゼのようなもので出血しているところをしっかり圧迫します。この時、こすったり血をぬぐったりすると却って止まりにくいのでギュッと押さえつけていて下さい。10?15分そのままでいれば、ほとんどの場合止血しているはずです。その後傷の状態を見てみます。傷口が大きかったり、小さくても深い時、15分ぐらい圧迫していても止血しない時、または糖尿病などがあり傷が化膿しやすい人の場合などは、すぐに近くの歯科医院を受診して下さい。治療としては傷口を消毒したり、止血や縫うなどです。

 次に硬組織の場合ですが、ここでは歯の外傷についてお話したいと思います。歯の外傷には破折と脱臼があります。破折はその程度、部位によって、ザラザラする所を滑らかに研磨する程度の治療から抜歯までさまざまです。もし割れた破片があったら、くっつける事が可能な場合もありますので、持って行きましょう。歯の脱臼とは歯が本来あるべき位置から外力によって移動してしまうことで、歯を支えている骨(歯槽骨)内にある場合を不完全脱臼(亜脱臼)、歯槽骨から完全に脱落してしまった場合を完全脱臼と言います。どちらの場合も受傷してからの時間がけがの治りの良し悪し(予後)に影響を及ぼしますので、少しでも早く歯科医院へ行って下さい。その時抜けた歯を持って行けば、また元の場所に戻せることもあります。その歯の状態も予後に影響します。どのようにして持って行けば良いかと言いますと、まずなるべく歯の根の部分をさわらないこと、それから乾燥しないようにすること。一番良いのは生理食塩水に入れることですが、牛乳など滅菌してあるものでも良いですし、何もなければ自分の口の中でもかまいません。そして前述したように、なるべく早く持って行くことです。   

 口の中の外傷は、自分では傷が直接見えないため、余計に不安になったり、唾液に血が混ざるために、実際より多く出血しているように感じたりしますので、なかなか難しいかもしれませんが、いずれの場合も、まず慌てないで次の行動に移れるように心がけて下さい。

(第19回掲載分)

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在宅治療

日本人の平均寿命は女性で84.62歳 、男性は77.64歳(2001厚生労働省公表)となっており、世界一の水準にあり世界の最長寿国となっていることはご周知の通りです。

近年少子高齢化が叫ばれていますが、今後高齢者の数は今後も増加し半世紀後には3人に1人が65歳以上の高齢者になるとの試算もあります。また介護保険制度も2年目に入り、在宅の要介護高齢者も全国では200万人程いると言われており、在宅歯科治療のニーズも高まることが推測されます。

 健康日本21でも謳われているように、これからの高齢化社会において、健康寿命を延伸し、生活の質を向上させる上でも在宅高齢者の口腔管理は重要になってきます。

 現在日本歯科医師会では現在8020(はちまるにいまる)運動を展開していますが、これは80歳高齢者を対象とした統計分析等から、歯の喪失が少なく残存する歯が20本以上あって、よく噛めている高齢者は生活の質および活動能力が高く、運動・視聴覚機能に優れていることが明らかになっています。現実的には80歳代では半数以上の人がすべての歯を失って食べることに不自由を感じていると言われおり、要介護高齢者においては歯科治療の必要性がある人の割合はかなり高いようです。

在宅での歯科治療したことで咀嚼能率が改善され、寝たきりの高齢者が口から食べられるようになって、歩くことができるようになったり、入れ歯を入れたことで話ができるようになったりというケースは多数報告されています。また、在宅での口腔ケアなどを通して、口腔衛生状態の改善を図ることが、誤嚥性肺炎の減少や、生活の質の改善に有効であることも示されています。高齢者福祉施設での調査では肺炎死亡率は7080%であるが、口腔ケアの励行により肺炎の発症率を40%減少させ、さらにその死亡率を50%まで減少させたとの報告もあり、高齢者の口腔衛生状態改善は死活問題だとも言えそうです。

医療保険制度での訪問歯科治療においては、虫歯の治療や新しい入れ歯の製作はもちろんのこと、歯科衛生士等による口腔衛生指導(口腔ケア)などのサービスもあります。また、介護保険制度の中での居宅サービスの中にも歯科医師・歯科衛生士による居宅療養管理指導(訪問口腔ケアサービス)などもあります。歯科訪問サービスを希望される方は、かかりつけ歯科医か胆江歯科医師会事務局(0197-24-0810)までご相談ください。

(第20回掲載分)

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全身疾患との関わり 

  医学の進歩に伴い、国民の平均寿命はのびました。健康な人も多いと思いますが、中には全身的な病気を持っている人も少なくありません。そのような全身疾患に歯科治療はどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、どんな注意が必要なのでしょうか。よくあるいくつかの疾患についてお話したいと思います。

1 高血圧

 多くの方は歯科に対して、多少なりとも怖いという気持ちを持っているでしょうし、全ての患者さんに全く痛みを感じさせないで治療することは難しいので、歯科治療中、またその前後に血圧の変動が起こりやすいのも事実です。血圧が高くなると、最悪の場合は脳内出血やクモ膜下出血を引き起こす危険もあります。しかし、治療がきちんとなされており、150/90位までにコントロールされていれば、精神的に安定していて、歯科治療が適切である限り、それほど心配はないでしょう。

2 糖尿病

 歯科医院を受診する方は、当然口の中になんらかの異常を持っているはずです。そのため十分に食事を取れないこともあるわけで、それにより低血糖になる恐れがあります。重症の時は昏睡状態に陥ります。また、動脈硬化の合併や化膿しやすいことなどにも注意が必要です。しかし、これもコントロールがしっかりされていれば、特に歯科治療に影響しません。

3 心臓病

 一口に心臓病といってもさまざまな疾患があります。いずれにしても心不全、不整脈、血圧の変動などいろいろな症状を起こします。その程度により、歯科治療内容は制限を受けます。例えば、血液をサラサラにするために、血が固まりにくくする薬を飲んでいる方は、抜歯などの出血を伴う治療をする時は、一時休薬が必要となります。また、口の中の細菌が血管を通って心臓へ行き、負担をかけることもありますので、それが予想される時は、あらかじめ化膿止めの薬を飲まなければなりません。ですから、歯科治療を受ける前に、お医者さんや歯医者さんとよく相談する必要があります。

 ほかにもさまざまな全身疾患がありますが、まず大事なのは、自分の病気をよく知って、きちんと治療を受けてコントロールすることです。そしてかかりつけの歯科医院を持つことも大切です。そこの歯医者さんにあなたの身体のことをよく把握してもらえますし、何より歯科に対する不安や緊張を取り除くために歯医者さんとの良好な信頼関係は欠かすことはできません。 

(第21回掲載分)

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マウスガード

    スポーツには外傷がつきものでとくに、顎口腔領域の外傷はコンタクトスポーツに多く見られます。衝突、転倒、打撲などにより、歯の破折や歯の脱臼、顎骨骨折、あるいは軟組織の咬傷、裂傷などが生じ、そして衝撃を吸収することにより顎関節の障害、さらに脳震盪になることもあります。さらに受傷以降のスポーツに対する姿勢、スポーツパフォーマンス、栄養摂取などに影響を及ぼすことも予想されます。 

  このように、スポーツ外傷に対してはその処置はもちろんのこと、いかに予防するかが重要となります。マウスガードはこれらスポーツ外傷から顎口腔領域を保護する口腔内装置として考案されアメリカを中心に普及しました。

   マウスガード装着による衝撃力の緩和は、その材料自体がエネルギーを吸収することよりしょうじ、また残りのエネルギーを他に広く拡散し、衝撃力の集中を防ぐことで、外力の顎と口のまわりへの衝撃をやわらげ、顎口腔領域のケガのだけでなく脳震盪や頸部外傷の頻度とその重傷度を減少させます。またマウスガード装着はスポーツパフォーマンスに好影響を及ぼすこともいわれるようになってきています。

   マウスガードの種類は、スポーツ用品店などで購入できる市販タイプと、歯科医院で一人ひとりの歯列に合わせて作製するカスタムメイドタイプのマウスガードとに分けることが出来る。市販タイプには、形態が一定で調整のできないストックタイプと温水につけて軟化させ口腔内にて自分で成形することで多少調整が可能なマウスフォームドタイプがあります。

  歯科医師により正しく調整されたカスタムメイドタイプのマウスガードは、適合性が良いのはもちろん、外力による衝撃を和らげるクッションの役目を果たすことが出来ます。

  しかし、安易なマウスガードの使用、つまり市販のマウスガードを正しく調整されずに 不適合な状態で使用するする場合は、マウスガード使用の本来の目的が得られず、衝撃によるダメージを予防することが出来ないことも生じます。そのため、マウスガード本来の目的が得られず、衝撃による顎関節へのダメージによって顎関節症(TMD)症状を誘発することもあります。 

  マウスガードに対して望まれることは、適合性がよく、呼吸や発生などへの影響が少なく、外傷予防の効果が最も高いことで、既成のマウスガードより、一人ひとりに合わせて作るカスタムメイドタイプのマウスガードの方が 外傷予防の効果が高いといえます。

  なお、マウスガードの装着により顎骨骨折の予防や脳振盪のダメージを軽減する効果が期待できますが、マウスガード材の衝撃吸収能を越えるような大きな衝撃力を受けた場合は、頭蓋顎顔面の損傷、さらには脳震盪やより深刻なダメージなどをすべて防止できるわけではないということを忘れないように。

(第22回掲載分)

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保険診療と自費診療

 歯科の治療には、保険でできるもの(保険診療)とそうでないもの(自費診療)があります。ほとんどの治療は、保険でできますが、一部保険ではみとめられないものがあります。
保険診療については、皆さんご存知だと思いますので、今回は、自費診療の主なものについて説明致します。

* メタルボンドクラウン
 歯の自然な色に近いかたちのかぶせものです。保険でも前歯に限り歯の外側を白くできるものがありますが、年数がたつと変色したり欠けたりする欠点があります。このメタルボンドクラウンは、この様なことはほとんどなく、奥歯にも適応できる利点があります。

* インプラント
 人工の根を骨に埋め込み、その上に冠をかぶせる治療です。入れ歯が、どうしても使えない方、いやな方は、この方法がよろしいかもしれません。

* 矯正治療
 歯並びを改善する治療です。最近子供のむし歯は、減少傾向にありますが、歯並びの悪い子供は、増加傾向にあるようです。今後益々矯正治療は、増えてくるのではないかと、思われます。

この他にも、色々ありますが、一般的なものだけ説明致しました。尚、自費診療の価格は、それぞれの歯科医院にて決められておりますので、多少違いがあります。

<特定療養費>

 この制度は、本来自費診療の扱いになるものの一部を保険で賄うというものです。これには、今の所、2つ認めらております。

1.     金属床義歯;総入れ歯の床の一部を金属にするもので、保険の入れ歯より、薄くなり食感がいいという利点があります。但し、部分入れ歯の場合は、認められません。

2.     12歳までの子供にたいする、フッ素塗布・フッ素洗口
全く虫歯のない場合は、自費診療となります。

以上簡単に説明致しましたが、詳しくは、各々のかかりつけの歯科医院にてお聞き下さい。いずれに致しましても、治療に入る前に、十分な説明を受け納得されてから始めることが、大切だとおもいます。

最後に、歯科医師会から、3つのお願いです。
  1.     歯科医院にお越しの際、保険証は必ず持参下さい
  2.     保険証変更の場合は、速やかにお申し出下さい。
  3.     1回の保険証確認にご協力ください。

(第23回掲載分)

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PMTCって何だろう 

 聞き慣れない言葉ですが、歯科疾患の予防には大切なことですので、今回はこのことについてご説明します。

 PMTCとは、継続したむし歯・歯周病予防のための専門的な口腔清掃のことです。それは、スウェーデンのイエテボリ大学の予防歯科の先生や歯科衛生士さんが、長年にわたり、むし歯や歯槽膿漏の治療の効果を追跡調査研究した結果、歯ブラシ等だけではどうしても取れない歯の汚れ(TV等でよく使われているプラークという細菌が集まって出来たバイオフィルムというねばねばした糊のようなもの)が、歯や歯ぐきの表面などにべっとりと、強固にくっついてしまい、特に歯と歯の間、歯ぐきの近くの歯や歯の根の表面などの普段の歯ブラシではどうしてもプラークが取れないで残る所がむし歯や歯槽膿漏の再発の原因になっていることが判ってきたために開発した方法です。実際には手用の器具、電動器具、研磨用のフッ素入りペーストを用いて歯面を清掃することで、強固なバイオフィルムをきれいにすることが出来ます。

 むし歯の原因菌のミュータンスレンサ球菌は、生後19ヶ月から31ヶ月ごろに、母から子へ感染し、歯槽膿漏の歯周病菌は母から子へ、あるいは配偶者へ家庭内感染していることが解明されています。虫歯の予防も歯槽膿漏の予防も、バイオフィルムの除去が基本です。

 このPMTCは、原則的には、虫歯、神経の治療、スケーリングという大きな歯石の除去、そして、丁寧な歯の根の表面の小さな歯石や汚れの徹底的な除去であるルートプレーニングなどをした後に行うのが普通で、むし歯や歯槽膿漏が治った人には、再発の予防に効果的です。効果は人によりますが、3?4ヶ月続くといわれています。

 いずれにしても、このPMTCは一度行うと、殆どの患者さんがその終わった後の清潔感、爽快感、気持ち良さ等の効果に満足し、続ける人が多い事も事実です。

 かかりつけ歯科医にご相談ください。

(第24回掲載分)

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